飲食のバイトを始めて約半年がたった。
新しいバイトを始めるたびに発見がある。
知らない世界、社会の裏側(ちょっと言いすぎ?)を覗くことができるような気がする。
やったアルバイトの数だけ、様々な職種の苦労を知る。
こういった人たちの苦労と努力の上に、僕たちの当たりまえの生活があるんだな。
そしてこういったエッセンシャルワーカーにおける勤労学生の割合って案外バカにならない。
友達の話を聞いていても、どこの飲食のバイトも人材難で結構学生のバイターが頑張って働いたりしている。
そういった苦労がわかると、自分がレストランに行って、ビールが出てくるのが少し遅かったり、食べ物が全然出てこないと、逆に店員の心配をしてしまう。
そして申し訳なく思う、こんな忙しいときに来てしまって。
客として来店しても、どうしても店員に感情移入しまうものである。
さて、そんな僕が飲食のバイトで一番身についた力は何だろう。
思うに、周りを見る力である。
お客さんが快適に過ごせるようにはどうすればいいか。
いやもとい、自分がお客さんに怒られないようにはどうすればよいのか。
そのために常に優先順位付けと、お客さんの観察は怠らないようにしている。
例えばお客さんが、ビールと枝豆、そして揚げ物を頼んだとする。
こういうときは、ビールはもちろんだが枝豆をすぐ用意するのが大切である。
まずは(比較的すぐにできるであろう)枝豆をつまみにビールをゴクリ。
枝豆とビールがグラスの半分を割ったくらいいのタイミングで、揚げ物が到着。
揚げ物をあてに残りのビールを流し込む。
とこう酒飲みは考えるわけである。
となると、枝豆の優先順位は上がるわけである。
幸いなことにまあまあな酒飲みである僕は、酒飲みの心理がわかる。
だから絶妙なタイミングでビールのお代わりをお伺いしたり、歯を気にされている方に爪楊枝を渡したり、周りを見て最適なアプローチをする力が結構身についているのではないかと感じる。
そして酔っ払いサラリーマンのダル絡みの扱いも結構うまく、意外にもおっちゃん人気が高いのだ(自称ではあるが)。
とまあ、こんな話をこの前行きつけのバーで話していたら、“そういう経験さ、絶対大事よ、社会人なったときに。”と隣に座っていた25歳の営業職の男性に言われた。
この方、Sさんはそこのバーの常連さんで、今まで何回かは顔を合わせたことがあったが、面と向かって話し合ったのはその日が初めてだった。
「いや、うちにも新卒で入った子で学生時代は相撲部一筋でバイト経験が一切ない子がいるんだけどさ、全然なってなくってさ~笑」
「相撲部!?」
相撲部のインパクトが強すぎて思わず聞き返してしまう。
「まあでも、なんというか、体育会系のノリで挨拶はできるとか、上下関係がしっかりしていて礼儀正しいとかはあるんじゃないですか?」
「いやね、そんなことより、やっぱりバイトをしていろいろな社会経験をする方が大事だよ。」
「なるほど。そういう意味では僕はいい経験できてるかもですね。」
なんて調子よくしゃべっていたものだ。
その日は、50代の常連さんでよくお酒もおごってくださるKさんがいつもより早めのチェックをした。
マスターは即座に
「タクシー呼びましょうか?」
とKさんに提案。
「おー、Mさん(マスターの名前)ありがとう、助かります。」
さすがマスター。常連さんのいつもとの違いをすぐに察知し、気の利いた声掛けができる。
そうマスターに話すと
「今日はKさん帰りが早いから、急ぎかなって思ったのよね」
と一言。
自分も、今以上に周りを見る目を養いたいな。
そう思わされた深夜1時の帰り道であった。
2022/11/2