こんにちは、カイトです。
今回は、北野唯我さんの書いた、『天才を殺す凡人』について解説していこうと思います。
この本は、公開して瞬く間に30万PVを超えた、大人気ブログが物語となんて書籍化されたものです。(↓)
僕はこの本をサラタメさん↓の動画で知りました!
とても面白く、簡潔にまとめられているので、是非一度見てみてください!
物語形式ということでこの本はビジネス書ではありますが、主に主人公(青野トオル)が犬のケンの助言によって、天才の苦悩、そして自分はどうするべきなのかということに気づいていくという形で進んでいきます。
あとがきで、北野さんはストーリー形式で本書を書いた旨を語っています。北野さん曰く、
“巷によくあるようなHow toだけを書いてあるビジネス書は理屈はわかっても実際にビジネスの場でそれをどう活用するのかわからないというケースがよくあるので、今回はあえてストーリー形式で書くことでイメージしやすくすることを心掛けた”
という趣旨のことを述べています。
僕自身、読む前はビジネス書ということでガチガチの硬い文章を想像していたら、とても軽いタッチの文章で最初は戸惑いました。でもストーリーを軸に具体例を用いながらこの本で核となる、<天才、秀才、凡人>について書いていくという本書のパターンになれると、確かに実際に自分の周りの世界とストーリー上の世界を照らし合わせながら読むことができ、めちゃくちゃ理解しやすかったし、イメージもしやすかったです。
ということで今回は、この本でいいなと思ったところをピックアップして紹介したいと思います!
天才、秀才、凡人とは?
まずはこの本の解説を進めていくうえでそもそも天才、秀才、凡人とは何なのかという定義をしていきたいと思います。
天才…独創的な考えや着眼点を持ち、人々が思いつかないプロセスで物事を進められる人
秀才…論理的に物事を考え、システムや数字、秩序を大事にして、堅実に物事を進められる人
凡人…感情やその場の空気を敏感に読み、相手の反応を予測しながら動ける人
キーワードは、
独創性の天才
再現性の秀才
共感性の凡人
です!
みなさんは天才、秀才、凡人のどれに近いでしょうか?
天才が凡人を殺す理由
このトピックについては冒頭に紹介した、サラタメさんの動画で詳しく解説されているので是非見てみてください。
ここでは軽く解説します。
本書で北野さんはその理由について明確にこう書いています。
「その理由のほとんどは『コミュニケションの断絶』によるものや。そんで、これは『大企業がイノベーションを起こせない理由』と同じ構造や」
引用元:「天才を殺す凡人」pp37
どういうことでしょうか?
凡人、秀才、天才では生きている次元が違うのです。本書の言葉を借りれば、そもそも違う軸で物事を考えており、基本的には三者の考えは交わりません。
企業というのは天才のアイデアのもと、始まります。
天才というのはみんなが見えない未来が見えるのです。ここに潜在的な需要がある、ビジネスチャンスがあるということにいち早く気付くんです。
そしてその天才のアイデアに共感した(感銘を受けた)凡人とともにビジネスをスタートさせます。
そして順調に企業が成長していけば次は秀才がその会社を率いる時代がやってきます。
数字やロジックを用いて、これからさらに成長するためにどうすればいいのか、論理的に分析するのです。
そしてこの秀才が率いる時代になると、天才は殺されます。
ここで重要になってくるのが多数決の原理です。
突然ですが、自分はみなさんは天才、秀才、凡人のどれに当てはまると思いますか?
ほとんどの人は自分が凡人だと思っているのではないでしょうか?
そうです。ほとんどの人は凡人なのです。
数では天才は凡人に比べて圧倒的に少ないのです。
「ええか。凡人はオセロや。オセロゲーム。凡人ってのは、成果を出す前の天才にはホンマに冷酷や。恐ろしく冷たい。だども、成果を出した途端、手のひらを返す。すごい!すごい!天才!って言いだす。やけどな、この反応こそが天才を二度殺すんだべ。」
「二度殺す…?」
「ええか、時代は変わる。時代が変わるとは、ルールが変わるということや。そして、天才も、ゲームのルールが変われば、失敗をする。間違える。すると、途端に凡人は意見を変える。あいつは終わった、とな。さっきまで手放しで褒めていた凡人が、急に態度を変える様子を見て、天才はさらに孤独を深める。」…
…「天才は二度殺される。一度は成果を出す前に。もう一度は成果を出した後に」
引用元:「天才を殺す凡人」pp49-50
凡人が大多数である社会である以上、凡人に見捨てられる₌天才の死を表しているのです。
こうやって社会から天才は抹殺されるのです。
まとめれば、
天才の核心的なアイデアにより事業が始まる
→会社が大きくなり、数字やデータを基に秀才が会社を率いるようになる
→天才は会社で浮いた存在となる(※)
→企業からイノベーションが生まれなくなる
という流れが生まれるのです。
(※)なぜこの段階で天才は浮いた存在になるのでしょうか?そもそも天才のアイデアというのは我々凡人には到底理解できません。
というのも凡人には思いつかないようなアイデアを思いつくからこそ天才であるわけで…。
だから最初こそはその熱意に共感した、少数の凡人とともに頑張っていくものの、会社が大きくなっていけばいくほどそういった天才のアイデアは淘汰されていきます。
というのも秀才にとっては、天才のアイデアは科学的な根拠のない、危ないものに感じられるからです。
そして我々凡人は秀才の提示するデータや数字によって納得させられ、天才のことを冷めた目で見るようになっていき、天才はますます孤独になっていく
ということです。
天才のイノベーション
ここでは天才がどうやってイノベーションを得ているのか、紹介していきたいと思います。
天才のイノベーションは「飽き」から言われるといいます。
「んだ。特に天才にとっては、誰かが作ったレールの上で生きていく、そんなのは朝飯前過ぎて面白くない。だから、天才は新しいレールを自ら敷いて、新しい価値を作りにいく。それは壮大な『飽きとの闘い』や」…
…「んだべ。ほんで、実はそれこそが『イノベーション』が生まれる瞬間、そのものなんや。つまり革新的なイノベーションとは、『組織の飽き』をモチベーションにした、『世の中の余白』に対する天才の指摘によって生まれるんや」…
…「あのな、大人はな、『飽きる』ことに対して、たくさんの対抗策を持っている。遊び、趣味、金、恋愛とかな。でもな、ちゃうんや、天才が求めているのはそんなんちゃう。これまでの世界に飽きているし、そこに『改善できる余白』しか見えない。だから、指摘するし、作るんや。彼らが求めるのは、常に飽きを満たしてくれるような、心が燃えたぎるような『余白』なんや」
引用元:「天才を殺す凡人」pp93-95
これ、なかなか面白いですよね。天才にとっては今の社会は非効率でつまらなく、飽きているんですよね。そしてそういった飽きから「こうすればいいじゃん!」というアイデアを生み出す。もちろんそれがぶっ飛びすぎて各方面から「それはないだろー!」って糾弾されることだってありますがそうやって革新的なアイデアが生まれるんです。
僕がこれを聞いて思い浮かべたのは、「タイミー」というアプリを開発した小川さんの記事です。
これは空いた時間で簡単に稼ぎたい人とすぐにでも人手が欲しい店舗をつなぐアプリです。
これも小川さんの「自分の暇な時間をいれておけばその時間でできることを提案してくれる便利なアプリってないの?」という考えから生まれたアプリだそうです。(詳しくは↓)
https://sogyotecho.jp/timee-interview/
これがいい例えかはわかりませんが、こうやって『世の中の余白』に対して革新的なアイデアを提示できるのが天才なのかなって思います。
凡人、秀才、天才の厳密な分類
「エリートスーパーマン」「病める天才」「最強の実行者」
先ほど、基本的には凡人、秀才、天才は基本的には交わらなく、そこで意見の相違が生まれると指摘しました。
しかし現実的に会社は機能しています。
そのカギを握る、アンバサダー的な役割をしているのが、「エリートスーパーマン」「病める天才」「最強の実行者」です。(下図参照)
彼らが天才、秀才、凡人を橋渡ししていることで会社は成り立っているのです。
①エリートスーパーマン<天才×秀才>…創造性と再現性が高く、ビジネスが大好きで投資銀行にいるようなとにかく仕事ができる人。しかしそのスペックが高すぎるがゆえ、外から見るとすごいが部下につくと大変。
②病める天才<天才×凡人>…創造性と共感性が高く、ただクリエイティブなアイデアを出すだけでなくそれが大衆に受けるかというところまでわかる人。しかし再現性に乏しく、また構造的にとらえるのが苦手。
③最強の実行者<秀才×凡人>…再現性と共感性を伏せ持ち、ロジックにも強く凡人の気持ちもわかり、常に組織の中心にいるような人。ただし革新的なアイデアを生み出すのが苦手。
④、⑤については後述。
そもそも凡人、秀才、天才の間ではなぜコミュニケーションは「軸」が異なるんでしょうか。
「その理由の根源は『主語の違い』なんやわ」
引用元:「天才を殺す凡人」pp124
凡人…主語を人メインで語る
秀才…主語を組織やルールなどの善悪で語る
天才…主語を世界や真理など、超越したなにかで語る
それは軸が違いますわけですよね。それぞれ見据えている世界が違うわけですから。
自分が違う次元の人間と分かり合うためにはまず主語を変えてみるところから始めてみましょう。
「サイレントキラー」
これは先ほどの図の④にあたります。
④(サイレントキラー)…秀才の一種。サイエンスの持つ「高い説明能力」を悪用することで生まれる。天才に対して憧れと嫉妬を抱える。
彼らは制度やシステム、ルールを用いて、自ら手をかけることなく組織の「独創性」や「共感性」を殺す存在となります。
「共感の神」
これは先ほどの図でいう⑤に当てはまります。
⑤(共感の神)…あまりに共感性が強く、誰が天才化を見極められる存在。天才を支えてくうえで大切な存在で、企業にいる根回しおじさん的なポジション。
彼らの存在によって天才は甦るのです。
「天才は共感の神によって支えられ、創作活動ができる。そして、天才が生み出したものは、エリートスーパーマンと秀才によって『再現性』をもたらされ、最強の実行者を通じて、人々に『共感』されていく。こうやって世界は進んでいく。これが人間力学から見た『世界が進化するメカニズム』なんや」
引用元:「天才を殺す凡人」pp176
そして、次章では共感の神になるために大切な、最強の武器を紹介します。
「自らの言葉」という最強の武器
我々凡人の最強の武器は言葉です。
その中でも「自らの言葉」が大切なのです。
自分の言葉の対義語が他人の言葉です。大人の世界は他人の言葉だらけです。
「んだべ。だども、大人が使う言葉を見てみい。ほとんどの言葉は『他人がつくった言葉』なんや。たとえば、利益とか、会社とか、マーケティングとか、こんな言葉はそもそも、この世には存在していない感情や。会社や組織、国家という『幻想』が作り出した、便利な言葉なんや」
引用元:「天才を殺す凡人」pp179
確かにそうですよね。我々の世界には自分の感情を表す言葉よりも抽象的な無機質な言葉が多く並びます。でも他人を動かすことができるのはそういった抽象的な言葉ではなく、熱い熱意のこもった言葉(自分の言葉)なんですよね。
本書で北野さんは赤ん坊が覚えるような言葉を想像するといいって言っています。
そしてなぜ大人は「他人の言葉」を使うのでしょうか。
「それはな、楽やからや。圧倒的に。他人の言葉は便利や。自分が主語じゃないから、意思もいらない。究極的に他人のせいにもできる。それはそれで別に悪いことちゃう。人が生きていくために生み出した技術やからな。でもな、自分がホンマに人を動かしたいと思ったら、そんな言葉じゃあかん。自分の言葉を使うんや」
引用元:「天才を殺す凡人」pp189
それぞれの人の中に天才はいる
今までは主に我々を凡人、秀才、天才と分類したうえでの話をしていましたが、そもそもわれわれをそうやって規定しているものな何なのでしょうか。
北野さんは我々はみな凡人、秀才、天才の要素を持っていて、それぞれの割合が違うだけだと言っています。
(僕も含め)自分のことを凡人だと思っているみんなの中にも創造性はあると言っています。
ここで北野さんは次のような例を引き合いに出します。
「夜中に、めちゃくちゃ面白いことを思いついてみて、メモった。明日すぐにでも発表しようと思う。ワクワクする。だども、翌朝見直してみると急に『全然筋が悪そう』に見える。結局昨日の自分がなんかバカみたいで恥ずかしく思いメモを削除する。」
引用元:「天才を殺す凡人」pp195
ぼくはこれ、めっちゃ共感しました。まさに自分もその経験をよくするからです。僕はよく寝る前に限らず、勉強中や移動中などに「このことをブログのネタにしたら面白そうじゃん!」って思って携帯にメモするんですけど、後になっていろいろ考えてみるとやっぱしようもないなってなって結局保留したっていう経験がたくさんあります。
この過程はまさに自分の中で、天才→秀才→凡人が順に出てきていることを表していると言います。
「…君の中にいる『天才』が思いついたアイデアを、社会的な基準やロジックで『良いか悪いか』を判断するのが、『秀才』や、そして最後に『恥ずかしい』とか『周りからどう思われているか』と感情で判断する。結果やめておこう、と凡人が出てきてしまう」
引用元:「天才を殺す凡人」pp195-196
そのアイデアがホンモノなのかどうかはおいておいて、そこで凡人が出てしまってアイデアを焼失させてしまうのはもったいないですよね。
僕自身のやり方でいうと、いいなって思ったアイデアを発見したらまずメモって思いつくだけその周辺のイメージを書き足します。
そこで本当にいいなと思ったものは実行して、そこでいまいちかなと思ったアイデアは寝かしておきます。
そうしていると、全く関係ない分野のことを考えているときなんかにそのアイデアを思い出して、その時のメモを振り返ると一度死んだと思っていたアイデアがよみがえるなんてこともあります。
まあ今は学生で物理的にも金銭的にも行動範囲は限られていて結局は実行できずに頓挫してしまうケースも多いですが、このやり方はおすすめです。
みなさんも自分の中にある創造性の芽を摘むがないように気をつけましょう。そこには未知数の可能性があるかもしれません…!
まとめ
ということで長々と『天才を殺す凡人』についてまとめてみました。
この本はまず着眼点が面白く、そもそも天才秀才凡人と人間を分類したことがない僕からしたらすべて新鮮で、そんな考え方もあるのか!!って新しい発見の連続でした。
個人的にこういった新しい発見がいっぱいある本は大好きなので大満足の一冊でした。
みなさんもぜひ一度手に取ってみてください!
2020/8/30