こんにちは、カイトです。
今回は僕が最近読んだ、本を三冊紹介していきたいと思います。
さいはての彼女
一冊目はこちら、原田マハさんの『さいはての彼女』になります。
この本は4本の短編からなる、短編集です。
4編の短編のタイトル
・さいはての彼女
・旅をあきらめた友と、その母への手紙
・冬空のクレーン
・風を止めないで
※最後の『風を止めないで』は『さいはての彼女』のスピンオフ作品になっていて、このタイトルだけは他の3作と毛色がちょっと違います。
今回は主に最後の『風を止めないで』以外のタイトルを中心に話していきます!
それぞれのストーリの主人公は女性になっていて、4本のうち、最後の1本以外は“バリバリ働いているキャリアウーマン”が主人公となっています。
働いている女性の悩みっていうのは想像以上に大きいです。
(僕は男なので直感的にはわかりませんが…笑)
本書に登場する女性たちも、
周りの友人関係や、恋愛や結婚に関する悩み、女性特有のジェンダーハラスメント、周りの同僚への嫉妬や羨望など様々な感情を持つ女性が出てきました。
この本ではそういった、心への負荷を抱えたキャリアウーマンが“旅”を通じて、自分自身を見つめなおすといったストーリー展開になっています。
この“旅”っていのが重要で、それぞれの主人公の人たちが行く先々で出会う「自分の好きなままに生きていく人々」との出会いを通じて自分自身を客観的に見直すようになります。
そして、“見栄”や“肩書”なんかにとらわれている自分自身に気づきます。
こういったことを象徴的に表しているシーンがあるので紹介したいと思います!
わたしは名刺入れから一枚、名刺を取り出した。まさか北海道で名刺を誰かに渡すはずはないと思いながらも、つい持ってきてしまったのだ。
四井都市開発株式会社 東京セントラルシティー開発チーム 課長補佐 陣野志保
名前の後ろに携帯番号を書き添えて、「四井」から「陣野」まで、文字の上に一気に横線を引いた。
「志保です。よろしく」
引用元:「さいはての彼女」 夜空のクレーンより pp170-171
彼女(主人公)は自分自身の肩書に誇りを持っていました。まだそこそこ若いのに名の知れた会社の課長補佐である自分。だから彼女の肩書はある意味自分の一部でもありました。しかし、北海道の弾丸一人旅を通じて、肩書にとらわれない、“私”としてなるために、この名刺の、会社名から名字のところまでを消そうと思ったんだと思います。
こういった、一つ一つのエピソードが凝っていて、とても面白い一作でした!
最後に個人的に好きなフレーズを紹介して終わりたいと思います。
人生の成功者と言われなくても、目の前の五十メートルを全力で駆け抜けるのだって、十分気持ちいいじゃないか
引用元:「さいはての彼女」 旅をあきらめた友と、その母への手紙 pp90
陽気なギャングが地球を回す
2作品目は伊坂幸太郎さんの『陽気なギャングが地球を回す』です。
嘘を見抜く名人、天才スリ、演説の達人、精確な体内時計を持つ女。この四人の天才たちは百発百中の銀行強盗だった…はずが、思わぬ誤算が。せっかくの「売上」を、逃走中に、あろうことか同じく逃走中の現金輸送車襲撃犯に横取りされたのだ!奪還に動くや、仲間の息子に不穏な影が迫り、そして死体も出現。映画化で話題のハイテンポな都会派サスペンス!
「BOOK」データベースより
この本は、伊坂幸太郎さんの陽気なギャングシリーズの第一作目になります。
とりあえず、テンポがよく面白いのでサクサク読めてしまいます。
この作品シーンごとに主人公が成瀬(嘘を見抜く名人)、雪子(精確な体内時計を持つ女)、久遠(天才スリ)、響野(演説の達人)の四人で変わりながらストーリーが進んでいきます。
すごいのがシーンごとに主人公が変わりながら進んでいるにもかかわらず、時間軸は行ったり来たりすることなく(回想シーンは除く)、しっかりと前に進んでいくというところです。
テンポよく、主人公が変わっていくので、かなり読みやすかったです。
そしてそんな作品を書き上げる、伊坂幸太郎さんすごい…!
それでいてストーリーもしっかりしていて、オチまでしっかり楽しめました!
哲学のすすめ
最後に紹介するのは、岩崎武雄さんの『哲学のすすめ』になります。
めっちゃ硬質なガチガチの新書になります。
なんかたまにこういう本って読みたくなりますよね笑
読み切って内容がわかると言われると正直微妙な感じですが、読了後の達成感は半端ないです!
人間はなんのために生きているのだろう?どうしたら幸福になれるのだろうか?哲学はいったいどんな役に立つのだろう?哲学と科学はどうちがうのか?哲学はいつの時代も変らないのだろうか?本書は、こんな疑問にやさしく答えながら、「考える」ことの重要さを説き、生きる上の原理としての哲学を深めた、よりよく生きるためのユニークな哲学入門である。――著者のことば
哲学というものは、その本質上、文章では説明しにくいことが多く、そのため用語も必要以上に難解になり、わかりにくくなる傾向があるが、著者は、日本の哲学書にありがちな特殊な専門語をできるだけ使わずに、ごく平明な文章で説明することに努めている。哲学的な「考え方」を説明し、哲学と科学とはどう違うかというような根本問題を説いている。表現はやさしくできているが、扱われている問題は高度に哲学的である。
Amazonの紹介欄より引用
難しかったといっても、上の紹介文でも書かれているように、“哲学”について論じてる本の中では圧倒的に読みやすいほうだと思います。
簡潔に結論を述べるのならば
哲学とは価値判断を下すことである
ということです。
どうでしょうか。何となくわかりますか?価値判断を下すという、“主観”がかかわる以上、客観的な哲学というのは存在しえないのです。
筆者は冒頭で、まず哲学というものが誤解されているといいます。
哲学は暇で物好きな変な人が研究しているものだと多くの人が思っていると筆者は言います。
なぜなら哲学は学ばなくたって生きていけるから。
でも実は我々の生活と哲学は密接な関係があるといいます。
我々は日々、意思を持って行動を選んでいます。
今日は○○を着よう。
とか
○○に行こう。
とか。
そういった選択の一つ一つには、我々の中にある、哲学によって選択されているといいます。
こういって、まず哲学に対するハードルを下げるところから本書はスタートしていきます。
僕は本書で特に面白いなと思ったのは、哲学と歴史の関係です。
歴史学というのが、過去の事実について価値判断を下すものではないというのは自明の理として誰もがわかると思います。
歴史とは
過去の事実をあるがままにとらえること
です。
過去の歴史は、現在のわれわれとは関係なく、すでに生起したものですから、それは事実として客観的に存在しているものであり、歴史家は主観的偏見を去って、事実がいかにあったかを究明すればよいわけです。
引用元:「哲学のすすめ」pp138
まあ当たり前ですよね。
でもその過去の事実を、歴史として取り扱うときに問題は発生します。
というのも、そもそも我々が過去の事実として客観的に得た資料(例えば古事記とか日本書紀)は信用できるものなのでしょうか。100%事実だとは正直言いにくいのではないでしょうか。
じゃあどうするかと言うと、歴史家がその資料を基にどこまでかが事実でどこからが虚偽なのか、判別していくのです。
その過程には明らかに、歴史家の価値判断が絡んでみますよね。
そういう意味で、歴史というのは必ずしも、客観的なものではないのです。
なかなか面白いですよね。
もちろん全部読んで全部理解するのは難しいと思いますが、ほかにも部分的に納得させられる指摘がいくつもあるので是非読んでみてください!!
2020/10/12