こんにちは。今回は最近読み終えた、『アルケミスト』についての書評をしていこうと思います。
アルケミストについて
アルケミストは、ブラジル人作家のパウロ・コエーリョさんが書いた、大人気小説で世界中で読まれています。
81カ国語に翻訳され、全世界8500万部もの発行数を誇ります。
元大統領のバラクオバマさんも愛読書のひとつとして挙げるなど、世界的に見ても常に知名度の高い本です。
今回はこの小説から僕が感じたことをあまりネタバレにならない程度に本文に沿って書いていきたいと思います。
感想
この本のタイトルにもなっている、アルケミストとはいったい何なんでしょうか。
アルケミスト(alchemist)とは錬金術師の意味です。
ここで言う錬金術師というタイトル、そのままの意味でもありますが本書ではメタファーの意味合いの方が強いです。
この本は、主人公が夢を求めて旅をするという構成になっています。
羊飼いの少年サンチャゴは、アンダルシアの平原からエジプトのピラミッドに向けて旅に出た。そこに、彼を待つ宝物が隠されているという夢を信じて。長い時間を共に過ごした羊たちを売り、アフリカの砂漠を越えて少年はピラミッドを目指す。「何かを強く望めば宇宙のすべてが協力して実現するように助けてくれる」「前兆に従うこと」少年は、錬金術師の導きと旅のさまざまな出会いと別れのなかで、人生の知恵を学んで行く。欧米をはじめ世界中でベストセラーとなった夢と勇気の物語。
BOOKデータベースより引用
主人公の少年(サンチャゴ)はもともと、神父になるように親から言われていました。
でも彼には世界をもっと知りたいと思っていました。旅をしたいと思っていました。
そんなサンチャゴの気持ちを汲み取った父が、羊飼いになる道を与えてくれたのです。
父はサンチャゴが羊飼いとして野原で生活することで、故郷の素晴らしさを息子に再認識させたかったのです。
ある日少年は夢を見ました。
エジプトのピラミッドにいけば宝物に出会える
その夢に従って少年は旅に出る決心をします。
夢が実現する可能性があるからこそ、人生はおもしろいのだ
引用元:『アルケミスト』pp16
こういう気持ちって大切にしたいですよね。
やっぱり人生は夢があってこそだと思います。
特に若いうちはとことん夢を見たい。
年を取ってくると、現実的な自分の能力の範疇で行動しちゃいます。
夢から覚めて、後ろと足元ばっか見つめた人生になりがちです。
前を向いて歩きたい。明るい未来を信じて突き進みたい。
この言葉に触れて、自分の人生と照らし合わせたとき、こう強く感じました。
まだ若い頃は、すべてが可能だ。夢を見ることも自分の人生に起こってほしいすべてのことにあこがれることも、恐れない。ところが、時がたつうちに、不思議な力が、自分の運命を実現することが不可能だと、彼らに思いこませるのだ
引用元:『アルケミスト』pp28
本当にその通りです。この呪縛に抗いたいです。
少年は旅に行く過程で様々な人に会います。
でも実現したら、それが自分をがっかりさせるんじゃないかと心配なんだ。だから、わしは夢を見ている方が好きなのさ。
引用元:『アルケミスト』pp66
旅の途中、お世話になるクリスタル商人の言葉です。
これもなんだかわかる気がします。
なんというか、成功体験を思い浮かべて、それを糧に努力するのはいいことだと思います。
ただその過程でどうしても自分の中でその成功体験が肥大化して、ある時「この先に待っているのはこんな大きい幸せなのか?」と疑っちゃいます。
僕は夢を見続けたほうが、夢と理想のギャップに苦しまなくて済むのではないか。
達成すらできていないのにそんな打算的なことを考えちゃう自分がどこかにいます。
そしてこの言葉はそんな僕に刺さりました。
少年は旅の途中でたびたび悩みます。
旅は上手くいかないことだらけ。本当に自分にとっての宝物が見つかるのか。
しかし、錬金術師(アルケミスト)との出会いが、彼を少しづつ変えていきます。
黙って歩きながら、彼は少しも後悔をしていなかった。たとえ明日死んでもそれは神様が未来を変える気がないからなのだ。……たとえ明日死ぬことになったとしても、他の羊飼いよりもずっと多くのものを見てきたし、それを誇りに思っていた。
引用元:『アルケミスト』pp128-129
過去も未来もなく、今を生きていると感じさせるセリフですよね。
ここから先はさすがにネタバレになってしますので、深入りはしませんがとにかく少年とともに僕も一緒に旅をしている気分で読み進められました。
この本はちまたにあふれている自己啓発本などで叫ばれている内容に通じるところもあると思います。
一方で、少し宗教チックでスピリチュアルな内容でもあることから、自分には合わないよっていう人もいるとは思います。
ただここで出てくる言葉はどれも力を持っていてグッとくるものが多く、個人的には大満足の一作でした。
生きる情熱を失いかけている人なんかは、読んでみるといい刺激が得られるんじゃないでしょうか。
2021/8/9