雑記

僕の想像力を最も掻き立てるのはゴキブリかもしれない。

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今晩、僕は恐怖した。

“ヤツ”は押し入れで現れた、唐突に。

今年初のご登場で約一年ぶりの顔合わせ。

昨年、僕と“ヤツ”は数々の死闘を繰り広げた。

昨年の9月には“ヤツ”をスプレーの噴射の勢いのみで玄関から戸外へ追い出し、人生初の“ノーハンドによる退治”を達成。

すがすがしい気分で昨年度の“ヤツ”との対戦は終了した。

最終決戦後には来年の戦いに向け、アマゾンですぐさまゴキブリキャップやゴキブリを寄せ付けない強力なスプレーを購入。

まずは家に入らせない、仮に入られてもゴキブリキャップに寄せ付け一殺することを心に誓った。

そして時は流れ今年の5月。

僕は予定通り、強力なスプレーをゴキブリが入って来そうな玄関口や窓の隙間に噴射しまくった。

このスプレーの効果はおよそ一か月とのことだったので毎月、時間を見つけては隙間に噴射。

まずは敵の侵入を防ぐ、ということで万全な対策を敷き、夏を迎えた。

6,7,8月と“ヤツ”とは無縁の生活を送り、僕の“ヤツ”に対する緊張感が薄れてきた9月初旬。

“ヤツ”は僕の心の油断に付け入るかのように飄々と現れたわけだ。

恐るべきゴキブリ。

今日、僕は友人と外食を済ませ、ルンルン気分で家に返ってきた。

お風呂入るの面倒だなと思いながらスマホを構うことおよそ30分。意を決してお風呂に入る。

そしてお風呂からあがり、下着を取り出そうと押し入れにある下着の入った棚を開けた。

その時僕の視界に何かがよぎった。

何かが押し入れの服類を掛けるポールに掛かったシャツから引き出した棚の中に落ちたような……。

“埃かな?”

僕はそう想起した。完全に緩み切ったこのときの僕の頭に“ゴキブリ”という選択肢は存在しなかった。

そんな無警戒の状態で下着を引っ張り出した時、“何か”が動いた。

風呂上がりの、まだ乾ききっていない僕の背中に残った水滴が急激に冷える心地。

湧き上がる過去の記憶、歴戦の日々。

ここで僕は覚悟した。

明かりがない押し入れで、棚から目を離さずに右手を伸ばしてゴキブリスプレーに、左手を部屋の机にあるスマホの方へ伸ばした。

スマホの懐中電灯機能を用いて、押し入れを照らす。

LEDの真っ白なライトに照らされた押し入れの中で、“ヤツ”の影がくっきりと浮かび上がった。

「うわ、、、」

いつも虫に遭遇したときにとっさに出てしまう、情けない自分の声が僕の不安を煽る。

僕は目一杯スプレーのレバーを引く。

ゴキブリはスプレーを受けるたびに逃げ回れ、下着の森を駆け回る。

僕は左手からスマホを離し、一枚、また一枚と下着をめくり“ヤツ”を探す。

明るさを失った押し入れは物音ひとつせず不気味で、うっそうとした下着の森を彷徨うよう僕の左手は震え、スプレーを握る右手は無意識に力が入る。

三枚目のシャツをめくると弱りきった“ヤツ”は手足(?)をぴくぴくと震わせ、棚の隅にいた。

見つけるや否や、容赦なくスプレーを浴びせ、“ヤツ”はついにノックダウン。

僕は三重に来るんだティッシュで“ヤツ”をがっつりホールド。

窓の外から“ヤツ”の死骸を放り出すと、緊張の糸が切れた僕は大きく一息つき、心の中で小さくガッツポーズをした。

額にはじんわり汗がにじんでいた。

そしてどすんと椅子に座ると、嫌な考えがどんどんどんどん湧いてくる。

“いつからいたんだろう”

“押し入れで発見したけど侵入経路は?”

“机の上に置きっぱなしにしていたコップに入ったりしてないよね……?”

“食器とかに触れてないよね?”

“え、もしや昨晩僕は“ヤツ”と一緒に寝てたのか”

“1匹いれば100匹いるとよくいるけど、“ヤツ”の残党はどこかに潜んでいないだろうか”

止まらない妄想。

下手なホラー映画よりよっぽど恐怖である。

そして僕はゴキブリが出るたびにいつも自分の内に秘められた豊かな想像力に驚かされる。

この豊かな想像力がもっと他に生かせないものだろうか。

そう願う、ゴキブリの恐怖で寝れない深夜のボヤキであった。

2022/9/5

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